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   .表紙
 少年
   
   
   
   
   
   
   
       
       草太と翼竜
   
   
   
   
   
   
   
   
   
              烏野 博史
   .人物
 題目:草太と翼竜 作:烏野博史
    【一行テーマ】
 誰とでも友情を結べる可能性がある。
   【三行ストーリー】
 一人でいる事と生物が好きの小学生の草太は竜の卵を拾う。竜のハッピーと触れ合い友情を結び、密猟者からハッピーを守る。
    【人 物】
 日野草太(10)三年生
 ハッピー(0)竜
 鮫肌耕平(49)密猟者
 牧場優子(10)草太の同級生
 日野楓子(38)草太の母
 部下A(35)密猟者
 教師(55)
 部下達 小学生達
   .脚本
1P①竜神山
2    竜の石碑の前に立つ教師。教師の周り
3    石畳に座っている生徒達。日野草太(1
4    0)と牧場優子(10)も座っている。
5 教師「この竜神山竜神遺跡は竜を神様として
6 まつっています。みんなも知っての通り、竜
7 は絶滅危惧種で今は見られないのですが、昔
8 はこの山にいたのでしょう。」
9    石碑には翼竜の絵が刻まれている。
10    草太はそばのトカゲを追いかけて歩き
2P    出す。草太は優子に耳をひっぱられる。
2    痛がる草太
3 優子「(ひそひそ声)そんな事ばかりしてい
4 たら、あんた独りぼっちになるぞ」
5 草太「別に良いし。暴力反対」
6    草太は不愉快そうに優子の手をはがす。
7 優子「ちょっと待ちなさいよ!」
8    山のどこかで銃声音がこだまする。
9 優子「何の音だろ?」
10    草太は一人、山道を歩いていく。
3P    
2 ②同・中腹の廃屋
3    林業の倉庫。建物の周りは雑草が生え
4    放題。しげしげと建物を見る草太。壁
5    面はパックリと割れて大きな穴。
6    
7 ③同・中腹の廃屋・中
8    割れ目から顔をのぞかせる草太。
9    小屋の中に天井からの光がさしている。
10    部屋の中央の地面に藁や小枝が敷き詰
4P    まっている。草太は小屋の中に入る。
2    地面の小枝を踏む草太。草太は辺りを
3    見回しながら中央に歩いていく。
4    物音。動物の影が地面を走る。天井の
5    穴を見上げる草太、動物の姿はない。
6    藁の中央にボーリング玉より少し小さ
7    な白い卵が埋まっている。
8    卵に耳をあてる草太。
9    壁の割れ目から入ってくる優子。
10 優子「ちょっと! 日野待ちなさいよーー」
5P    草太の眼前に降り立つ竜。四本の脚に
2    大きな翼。4mの巨体。竜の咆哮。
3 草太「(叫び声)」
4 優子「(叫び声)」
5    壁の穴からかけはいり猟銃を構える鮫
6    肌耕平(49)と部下Aと部下達、次々
7    と発砲。
8    鮫肌達に向かって突進する竜。
9    体を伏せてかわす鮫肌と部下A。
10    しっぽを振るう竜。部下達の内、数人
6P    がしっぽでたたきつけられる。
2 鮫肌「何やってるんだ。撃て!」
3    鮫肌、竜を撃つ。部下Aと部下達も銃
4    弾を撃つ。
5    銃弾が竜の体にささる。苦しみながら
6    屋外の空に飛びあがる竜、翼の動きを
7    止めて落下。うなり声をあげてうずく
8    まる竜。そっと竜を伺い見る部下A。
9 部下A「すごいですね」
10 鮫肌「竜が嫌う植物の成分をつめた麻酔銃だ。
7P 苦労して見つけた。運搬車に運べ」
2    竜が暴れて、空に飛び立つ。
3 部下A「逃げられました!」
4 鮫肌「何しているんだ! 何日もかけてやっ
5 とここまで追いつめたのに」
6    鮫肌はあたりを伺う。
7 鮫肌「奴はなんでこんな所に・・・・・・」
8    鮫肌、草太のほうに向き直る。
9    緊張した面もちの草太。
10 鮫肌「君たちは何でここにいる」
8P 優子「わ、私たちは遠足、で」
2    じっと草太を見つめる鮫肌。
3 鮫肌「なるほど。無事でよかったね」
4 優子「あ、はい、ありがとうございます」
5 草太「・・・・・・今の竜だろ。おじさん、
6 何してるんだよ。」
7    じろりと草太を見る鮫肌。
8    気圧される草太。
9 鮫肌「・・・・・・竜は希少だからね。竜の
10 出没するこの森を調べていたんだ」
9P 草太「調べる? でも今の」
2 鮫肌「(たからかに笑い)人に危害を加えよ
3 うとしたからだよ。それに、あれでは竜は死
4 なない!」
5 草太「・・・・・・ふーん」
6    鮫肌、笑顔。
7 鮫肌「道を教えよう。今見たことは秘密だよ」
8 優子「はい」
9 草太「道はわかりますから」
10    草太、リュックサックを背負いなおし
10P    て、割れ目からでていく。
2 優子「失礼しました」
3    追いかける優子。
4    鮫肌は注意深く辺りを見回す。
5    地面のわらや木の枝をつまみあげる。
6    眉をひそめる鮫肌。
7    藁の上の帽子に草太の名前と住所。
8    
9 ④日野家・前(夕)
10    田舎のぽつんとした一軒家。
11P    〝日野〟の表札。
2 草太の声「ただいま」
3    
4 ⑤同・草太の部屋(夕)
5    リュックサックを背負った草太と日野
6    楓子(38)が後ろから入ってくる。
7 楓子「ちゃんと手を洗いなさい!」
8 草太「わかったから、あっちいっててよ」
9    草太、楓子を部屋の外においやる。
10    草太はリュックサックをおろす。
12P    リュックサックから卵を取り出す草太。
2    床においた卵をじっと見つめる草太。
3 草太「きっとこれは竜の卵だ」
4    興奮した様子の草太、あたりを見回す。
5    押し入れの中から毛布を取り出して卵
6    の下をくるむ。かたかたと震える卵。
7    草太、卵に耳をぴったりとつけて目を
8    つぶる。
9 草太「(つぶやくように)やっぱり生きてい
10 るんだ・・・・・・よぉし!」
13P    押し入れからどんどん布団や衣類を引
2    き出す草太。
3    
4 ⑥同・前(早朝)
5    空に月の光が輝いている。
6    
7 ⑦同・草太の部屋(早朝)
8    窓から月の光が差し込んでいる。
9    床に敷かれた布団。布団の上でパジャ
10    マ姿の草太があぐらをかき、うつらう
14P    つらとしている。草太の足の上には卵。
2    卵は服を着せられていて、下のほうに
3    は毛布が巻き付けられている。
4    目をさまし、目をこすり立ち上がる。
5    卵がこける。こけた卵をおこす草太。
6    草太、眠た気によろよろとドアのほう
7    に向かう。再び卵がこける。
8    怪訝な顔をして振り返る草太。
9    グラグラとゆれる卵。卵に亀裂が入る。
10    草太、目を見開き慌てて卵に這い寄る。
15P    卵の殻の一部に穴があく。中の生物が
2    穴を広げる。亀裂は徐々に大きくなり、
3    ついに卵の殻は二つに裂ける。
4    草太の顔に驚きが広がる。
5    月の光が小さな生物が殻から這いだす
6    のを照らす。四本の手足に一対の小さ
7    な翼を持つ、15cmほどの小さな竜。竜
8    は瞼を開きクリクリした黒い目玉で草
9    太を見つめる。甲高い鳴き声をあげて
10    草太に歩みよる竜。
16P    口をあんぐりと開けている草太。
2 草太「お前、竜なのかい」
3    竜は鳴き声をあげ、草太の指に触れる。
4 草太「やっぱりそうなんだ!」
5    うれしそうに竜をのぞきこむ草太。
6 草太「お前に名前をつけてあげる。そうだな
7 ・・・・・・ハッピーはどう?」
8    竜はうれしそうに鳴く。
9 草太「そうか。ハッピー! 今日からお前は
10 ハッピーだ!」
17P    ハッピーを高く持ち上げる草太。草太
2    はうれしそうにハッピーに頬ずり。
3 草太「僕がお前を大きくしてやるからな」
4    草太の頬をペロペロとなめるハッピー。
5    
6 ⑧日野家・前(朝)
7    
8 ⑨同・草太の部屋(朝)
9    布団や衣類でちらかっている。押し入
10    れのそばの段ボール箱にハッピー。ハ
18P    ッピーを見つめている草太。草太の脇
2    にはホットミルクの皿と目玉焼きの皿。
3    ハッピーは羽をバタつかせて草太のほ
4    うに行こうとするが飛べないので、段
5    ボール箱の壁をずり落ちる。
6 草太「ハッピーは何をたべたい」
7    ハッピーは首をかしげる。
8    ミルクをいれた皿を箱に入れる草太。
9    ハッピーはミルクをなめる。
10    目玉焼きをたべようとする草太に鳴き
19P    声をあげるハッピー。
2    皿から落とした目玉焼きをキャッチし
3    てムシャムシャと食べるハッピー。
4 草太「何でも食べるんだな。色々持って来た
5 けど、大丈夫そうだなちょっと待ってて」
6    驚く草太。部屋を出て帰ってくる草太。
7    側の床にはリンゴやバナナやキャベツ、
8    牛肉のパックを置く。
9    ハッピーは食べ物をもぐもぐと食べて、
10    どんどんお腹が膨らむ。
20P    草太は満足気な顔。
2 楓子の声「草太!」
3    草太は驚いてドアのほうを見る。
4    楓子がドアを開ける。
5 楓子「何散らかしてるの!」
6 草太「片づけるつもりだったんだよ」
7 楓子「学校におくれるわよ」
8    楓子が去ると、押し入れをあける草太。
9 草太「すぐ帰ってくるからね」
10    草太、押し入れをしめると、ランドセ
21P    ルを背負って部屋を出て行く。
2    
3 ⑩道
4    遠くで学校のチャイムの音が聞こえる。
5    ランドセルを背負った草太が慌てて家
6    の方に走る。
7    ランドセルを背負った優子が草太を追
8    いかけてくる。
9 優子「待ちなよ! 日野! あんた遠足の時、
10 何か隠していたでしょ」
22P 草太「隠してない!」
2 優子「だから、ちょっと待ちなよ!」
3    優子を見て必死に逃げる草太。角を曲
4    がりゴミ置き場に隠れる草太。
5    優子は走りさる。草太は優子とは逆方
6    向に走っていく。
7    
8 ⑪日野家・前
9    辺りの様子を伺いながら、ポケットか
10    ら鍵を取り出して、家に入る草太。
23P    
2 ⑫同・草太の部屋
3    ランドセルをおろしながら、笑顔でド
4    アをあける草太。
5 草太「ハッピー!」
6    草太、驚愕の表情。
7    部屋が散らかっている。押し入れのふ
8    すまがはずれている。
9    部屋の襖の中のものや棚のものが倒れ
10    ている部屋の中央で草太の教科書にか
24P    ぶりついているハッピー。
2 草太「僕の教科書だよ! 食べ物じゃない」
3    草太、教科書を引っ張る。
4    羽をバタつかせるハッピー。ハッピー
5    は踏ん張る。教科書が破れる。
6 草太「うわーっ! 何してるんだよハッピー!」
7    うれしそうに草太を見るハッピー。
8 草太「これは遊ぶものじゃないだろう」
9    ハッピー、首をかしげる。
10 草太「もう。片づけろって言われているのに」
25P    草太、ため息をつき、床に散らばった
2    ものを拾う。草太の背中をのぼるハッ
3    ピー。
4 草太「ちょっと、ハッピーやめろって!」
5    拾ったものを落とす草太。草太の肩を
6    左右に移動して、草太の手をかわすハ
7    ッピー。倒れる草太、むっとした顔で
8    ハッピーから顔をそむける。
9    首をかしげるハッピー。ハッピーを両
10    手で抱き抱える草太。
26P 草太「捕まえたぞ! この」
2    草太、笑う。
3    玄関のドアが開く音が聞こえる。ドス
4    ン、ドスンと足音が近づいてくる。
5 草太「ハッピーはやく隠れろ!」
6    ハッピーを押し入れに押し込む草太。
7    ドアを開き、じろりと草太を見る楓子。
8    散らかった中、押し入れの前で寝そべ
9    り、ひじをついている草太。
10 草太「あ、お母さんお帰りーー」
27P    じろりと草太を見る楓子。
2 楓子「片づけなさいっていったでしょ!」
3 草太「・・・・・・はい」
4    楓子に気圧されて、転げる草太。
5    
6 ⑬川
7    自転車を止める草太。
8    リュックサックを背負っている草太。
9    一回り大きくなっているハッピー。
10    石にすわる草太。
28P 草太「お前のせいで怒られたじゃないか」
2    何くわぬ顔で川にかけていくハッピー。
3 草太「お母さんに気づかれたら、うちで飼え
4 なくなるぞ」
5    ハッピー、草太を振り返る。
6 草太「わかっているのか!」
7    草太はそばにあった木の枝を投げる。
8    ハッピーは木の枝を口でキャッチする。
9    驚く草太。別の枝を投げる草太。
10 草太「危なかったんだぞ!」
29P    再びハッピーは木の枝をキャッチ。
2    ハッピー元気よく鳴く。
3    草太、側にある大きな石に座り、ため
4    息をつく。
5    川をじっと見ているハッピー。ハッピ
6    ーは川に飛び込む。
7    驚いてハッピーにかけよる草太。
8 草太「ハッピー!」
9    勢いよく川から上がってくるハッピー。
10 草太「え、大丈夫?」
30P    ハッピー、口から魚を吐き出す。
2 草太「えっ、くれるの」
3    宙返りをして鳴くハッピー。
4 草太「ハッピーは器用だな」
5    草太、決心した顔をする。
6    
7 ⑭日野家・前(夕)
8    楓子、玄関から出てくる。
9 楓子「あら、お帰り」
10    自転車をおした草太がやってくる。草
31P    太、リュックからハッピーを取り出す。
2 草太「ハッピーです。お母さん。うちでハッ
3 ピーを飼って良いでしょ。お願い!」
4    怖い顔をする楓子。
5 楓子「何? 駄目よ」
6 草太「お願い! ハッピーは帰る所がないん
7 だよ」
8    真剣な顔の草太。
9 楓子「・・・・・・仕方ないわね」
10 草太「やったー」
32P    嬉しそうにハッピーを抱えあげる草太。
2    ハッピーもつられて鳴く。
3 楓子「それにしても、ハッピーかわった動物
4 ね。トカゲ・・・・・・犬?」
5 草太「・・・・・・竜かな」
6 楓子「竜? ふーん。まぁ、じゃ、ご飯にし
7 ましょう」
8    楓子、家の中に入っていく。
9    草太、呆然とハッピーを見る。草太を
10    なめるハッピー。
33P    
2 ⑮日野家・前
3    草太とハッピーが家から出てくる。
4    ハッピーのサイズは大型犬程度になっ
5    ており、草太よりも大きい。
6    鮫肌がたたずんでいる。
7 鮫肌「君は・・・・・・ひさしぶりだね」
8    にやりと微笑む鮫肌。
9    鮫肌の手には草太の帽子。
10    草太、びっくりして後ずさる。
34P    鮫肌に興味を持つハッピーを手で制止
2    する草太。
3 草太「まて。ハッピー」
4    鮫肌はハッピーを見る。
5 鮫肌「そうか。ハッピーと言うのか」
6    鮫肌。不敵に笑う。
7 草太「おじさんなんで、ここにいるの?」
8    眉をひそめる草太。
9    
10 ⑯同・居間
35P    庭先で蝶々をおいかけるハッピー。
2    机を挟んで鮫肌と向き合う楓子と草太。
3 鮫肌「ハッピー君を私どもに引き取らせて頂
4 けないでしょうか?」
5    草太、身を乗り出す。
6 草太「駄目だよ」
7 楓子「なんで、そんな事を?」
8 鮫肌「竜は希少な生き物です。どこで産まれ
9 どう育つのか、その生体は知られていません。
10 私どもの施設で研究をさせて欲しい」
36P 草太「駄目だよ。ハッピーは家族なんだ!」
2 鮫肌「家族? 竜は人とは一緒に住む事はで
3 きませんよ。これも竜にやられました」
4    鮫肌は袖をまくり腕に傷があるのを見
5    せる。
6    心配そうに楓子を見る草太。
7 楓子「お引きとりください」
8 鮫肌「また来ます」
9    鮫肌、不敵な笑みを浮かべる。
10    
37P ⑰森(夕)
2    ハッピーと草太が並んで走っている。
3    翼をはためかせるハッピー、宙に浮く。
4 草太「ハッピーちょっと待て! うわっ!」
5    足を木の根っこにひっかけて転びそう
6    になる草太。すぐさまハッピーが草太
7    の服を口でつまみ助ける。
8 草太「ありがとうハッピー」
9    ハッピー、宙返りをする。
10    笑う草太。
38P    自転車をおしている優子が獣道の先に
2    佇んでいる。目を見開いている優子。
3 優子「日野、いったい何やってるの?」
4 草太「なにって、かけっこ」
5 優子「それ、竜でしょ。なんで?」
6 草太「卵から育てたんだよ。大丈夫だよ。ね。
7 ハッピー」
8    ハッピー、うれしそうにほえる。
9 優子「・・・・・・本当に?」
10 草太「ほら、なでてみなよ」
39P 優子「え? いや、やっぱり危ないって。」
2    優子、おそるおそるハッピーの額をな
3    でる。気持ちよさそうなハッピー。
4    ハッピーの背中にのる草太。
5 草太「今練習中だけどこんな事もできるんだ。
6 ゴー! ハッピー」
7    翼をはためかせて浮上するハッピーと
8    草太。得意顔の草太。驚く優子。
9    トンボ見つけておいかけるハッピー。
10    急な方向転換で落ちる草太。
40P    心配そうにかけよる優子。
2 優子「大丈夫!?」
3 草太「いてて」
4    頭から血を流す草太、足を抑え苦い顔。
5    
6 ⑱日野家・前(朝)
7    運搬車の前に立っている鮫肌。草太と
8    楓子が並んで立っている。草太の足と
9    頭には包帯が巻かれている。口にひも
10    を結わえられたハッピー。ひもを持っ
41P    ている部下A。
2    悲しそうに楓子を伺い見る草太。
3 草太「こんなのかすり傷だよ」
4    草太の両肩に手を置く楓子。
5 楓子「駄目よ」
6 草太「そんなぁ……」
7    その場でくるくると回るハッピー。悲
8    しそうな声でほえる。
9 草太「ハッピー」
10    運搬車の荷台が開き部下Aにつれられ
42P    てハッピーが荷台の奥に入っていく。
2    にやりとほほえむ鮫肌。
3 鮫肌「私の言ってた通りになりましたね。」
4    走り去る運搬車をおいかける草太。
5 草太「ハッピー!」
6    草太、肩を落とす。俯く草太。
7    
8 ⑲道
9    とぼとぼと歩いている草太。
10    優子が自転車で通りかかる。
43P    深刻な顔の草太。
2 優子「大丈夫?」
3 草太「放っておいてよ」
4 優子「竜は?」
5 草太「ハッピーは・・・・・・トラックで遠
6 くに行ってしまった・・・・・・遠足の時の
7 あったおじさんに」
8 優子「えっあのおじさん、なら見かけたよ」
9    草太、驚いた顔。
10 優子「トラックにのってたし間違いない。す
44P ぐ近くだったよ、あそこなら、最後に一目見
2 るぐらいできるんじゃないかな?」
3 草太「え?」
4    草太、うなずく。
5    
6 ⑳廃工場・前
7    河川沿いの廃工場。草太と優子は自転
8    車でのりいれる。
9    
10 ○21同・敷地内
45P    空き地に複数台の運搬車が止まってい
2    る。建物には明かりがついている。
3    草太は屋内にのぞき込む。
4    鮫肌と部下Aと部下達が食事をとって
5    いるのが見える。
6 部下A「例の薬でおとなしくなりました。本
7 当に育てるんですか?」
8 鮫肌「売るに決まっているだろ」
9 部下A「やっぱり」
10 鮫肌「ただ、あれだけ、人になれていれば使
46P えるかもしれないな」
2 部下A「というと?」
3 鮫肌「竜はごく希に確認されるが、大人の竜
4 ばかりだ。どこかに竜が生まれ育つ場所があ
5 るはずだ。仲間の居場所を教えてくれるかも
6 しれない。売るのはそれからだ」
7 部下A「ただでさえ売買は禁止されているの
8 に、怖い人だ」
9    草太と優子、顔を見合わせる。
10    草太は運搬車のほうにかけよる。
47P 草太「(小声で)ハッピー」
2    運搬車からハッピーのほえる声が聞こ
3    える。草太、人指し指をたてる。
4 草太「しー、ここから出してやるからな」
5    ハッピーは小さく鳴く。
6    運搬車のロックを探す草太。
7 優子の声「(悲鳴)ちょっとやめてよ!」
8    草太が振り返ると、鮫肌と部下Aと部
9    下達が建物から出てきている。部下A
10    に捕まっている優子。
48P    鮫肌をにらむ草太。
2 鮫肌「聞かれてしまったか」
3 部下A「この子はどうしますか?」
4 鮫肌「騒がれても面倒だな。つれていけ」
5    部下Aと部下達は草太と優子を運搬車
6    にいれる。
7 鮫肌「いくぞ。我々は霧の谷に向かう!」
8    複数の運搬車のエンジンが稼働、工場
9    から出て行く。
10    
49P ○22霧の谷の山道(夕)
2    ヘッドライトをつけた運搬車A・B・
3    Cが順に走る。他の車はない。山道の
4    すぐ脇には濃い霧の深い谷。
5    
6 ○23走る運搬車Aの中・荷台(夕)
7    小窓から少し光がはいる。鎖につなが
8    れているハッピーを心配そうに見てい
9    る草太。草太の横、三角座りで顔をふ
10    せている優子。
50P 優子「ちょっと~・・・・・・だしてよ」
2    優子、床をたたき、すすり泣く。
3    へたっているハッピー、目だけ草太を
4    みている。
5    草太、ハッピーの頭をなでる。
6 草太「ハッピー。ごめんよ。引き渡してしま
7 って・・・・・・」
8    ハッピー、力なくうなる。
9 草太「元気ないな。あいつに毒の草を使われ
10 たのかい」
51P    ハッピー、力なく鳴き声をあげる。
2 草太「ハッピー・・・・・・」
3    草太、立ち上がる。
4 草太「ハッピー、僕は友達がいないからさ。
5 うちに来てくれて嬉しかったんだ。一緒に遊
6 んで、一緒においしいごはんを食べてさ」
7    ハッピー、顔をあげる。
8    草太、後部のドアを両手でおす。
9 草太「絶対助けてあげるからね。ハッピー」
10    草太、運搬車の後ろのドアに体当たり。
52P    草太を見て、立ち上がる優子。
2 優子「わ、私もよ」
3 草太「ハッピー、ここから出よう! また一
4 緒に暮らそう!」
5    ハッピー手足の鎖をひっぱり、じりじ
6    りと草太のほうに近づいていく。
7    ハッピーにつながれた鎖が次々と切れ
8    ていく。おどろく草太。
9    ハッピーは大きな、うなり声をあげる。
10    
53P ○24走る運搬車Bの中・運転席(夕)
2    運転している部下A。助手席の鮫肌。
3    山からうなり声が木霊する。
4 部下A「前の運搬車。うるさくありません?」
5 鮫肌「放っておけ」
6 部下A「霧が濃くなりましたね。まるで夜だ」
7 鮫肌「霧の谷が近づいてるからな」
8    道の霧は急激に立ちこめて、どんどん
9    薄暗くなっていく。
10    
54P ○25走る運搬車Aの中・荷台(夕)
2    草太と優子、体当たりをする。
3 草太「(叫び)」
4    ハッピーの鎖がひきちぎれる。
5    草太の脇を抜けてドアに体当たりをす
6    るハッピー。ドアが大きくゆがむ。
7    ドアをのぞきこむ優子。
8 優子「ハッピーいけるよ!」
9 草太「いこうハッピー!」
10    ハッピー、もう一度、ドアにアタック。
55P    ドアがはずれる。
2    
3 ○26霧の谷の山道(夕)
4    運搬車Aの荷台から飛び出す草太とハ
5    ッピーと優子。ハッピーはすぐさま草
6    太と優子を両手、両足でキャッチする
7    とそのまま谷側に滑空する。
8    二人を抱えているので高度がとれずに
9    すぐ後ろの運搬車Bに併走してしまう
10    ハッピー。
56P 鮫肌「何! どういう事だ! 逃がさないぞ。
2 くそ! なんなんだ! この霧は!」
3    猟銃を取り出し、ハッピーを狙う鮫肌。
4 草太「危ないハッピー!」
5    ハッピーは銃弾をかわす。
6    突風がふく。しばらく続く暴風。
7    ハッピーは上昇気流で上に吹き上げら
8    れ、運搬車はふらつき蛇行する。
9    火花を上げパンクする運搬車のタイヤ。
10    鮫肌の運搬車が玉突き事故を起こして
57P    炎をあげる。
2    席から身をのりだす鮫肌。
3 鮫肌「覚えてろよぉ!」
4    鮫肌と燃え上がる運搬車は小さくなり
5    霧の中に消える。爆発の小さな光。
6    唖然とする草太と優子。
7    
8 ○27大空・竜の島(夕)
9  草太とハッピーと優子は濃い霧を抜ける。
10 優子「見て」
58P    霧の中にぽっかり島が浮いている。明
2    るい夕日と竜達の群れが飛んでいる。
3    ハッピー、草太と優子をすぐ下の地面
4    におろす。
5 草太「……霧の中にこんな所があるなんて」
6 優子「でもここ空の上でしょ」
7    ハッピー、元気よくほえる。
8    ハッピーに呼応するようにほえる竜達。
9 草太「きっと竜達のすみかなんだ」
10    草太、ハッピーをなでる。
59P    満足そうなハッピー。
2    ハッピーを見て、竜達をながめる草太。
3 草太「……僕たちも帰らなくちゃ! 僕たち
4 を送っていってくれるかい。ハッピー!」
5    ハッピー、宙返りしてほえる。
6    切なそうに涙を流してハッピーを抱き
7    しめる草太。
8    
9 ○28日野家・前
10    草太がかけて出て行く。
60P    
2 ○29竜神山
3    野鳥の鳴き声が聞こえる。草太は一人
4    で森の木々、草むらの下などを確認し
5    ていく。
6 優子の声「ちょっと待って!」
7    息をきらして、登ってくる優子。
8 優子「私もハッピーみたいな竜が欲しい!」
9 草太「わかった。じゃ、会いにいこう」
10    草太と優子は自然の中、山道を上る。
61P
2
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